失われた8年の幕開け

遡るは10年以上…

寒さとあったかさの両方に揺さぶられ、
はらはらと桜の舞う春。

私は地元では有名&人気な高校に進学しました。

(自称?)進学校のため、
出身高校を尋ねられてこの学校の名前を出せば、
一目置かれるくらいのネームバリュー。

世間一般から見れば青春真っ只中、華のJK。

けれど私にとっては、地獄の幕開けとなりました。

下校時の公園で

季節はちょっと進み、木の葉が青々と茂る初夏。

お気に入りの真っ赤な自転車で、
緩やかなアップダウンを繰り返す直線をこぎ、
いつもの帰路についていた時。

中学の時のクラスメイトに、偶然遭遇。

アニメや漫画が好きでイラストが上手、
気軽に話せる仲の子でした。

ちょっとおしゃべりしようぜと、
近くにあった公園へ。

ブランコに座り、
漕ぐでもなくゆるゆる揺られながら、
学校の授業のこと、
キャラの濃い先生のこと、
入学早々にあった合宿(シメ?)のこと、
終わったばかりの運動会のこと…

離れてから約2ヶ月分の、
なんてことない日常の話で
盛り上がっていました。

英語の先生、授業中一人称が下の名前でさぁとか、
「wh」の発音がすんごい違和感あるんだよとか、
くだらない話をしていた時。

突然、視界が歪むような回るような、
同時に色褪せて暗くなるような感覚に襲われました。

頭がズキズキ痛み気分も悪く、
急に一歩も動けなくなってしまったのです。

友人の手前、できれば心配も困惑もさせたくなかったのですが、
我慢することも取り繕うこともできないくらいの症状。

一歩でも踏み出したら倒れそうというか、
吐きそうというか…そんな感じでした。

実は小学生くらいの頃から、
疲れが溜まると偏頭痛を発症し、
学校を早退して点滴打って帰る…
ということを繰り返していました。

今回もきっとそれかもなぁ。
けどまた急に来たなぁ…。
そしてタイミングもクリティカルに最悪。

常備していた頭痛薬を飲んでしばらくすると
なんとか動くけそうになったので、
ひとまず家を目指すことに。

友人はかなり心配してくれていましたが、
「多分いつもの偏頭痛だよ。1~2日すれば多分復活してるから大丈夫。」
というようなことを伝えて、その時は解散しました。

これが人生大激変の初日になろうとは、
思いもしませんでした。

何かがおかしい

いつもの偏頭痛なら、
前述の通り割とすぐに良くなっていました。

ただし症状は軽くないので、
酷い頭の痛みにのたうちまわりながら
なんとか寝なければならないとか、
あまりの痛みに胃の内容物を全部戻すとか、
いらないおまけつきでしたが。

ただ、今回はちょっと違う…

そこまでの酷い痛みでもなければ、吐き気もそこまでなく…
ただいつもより、重くてだるくて動けないのが、一向によくならない。

そもそも偏頭痛なら、前兆があるのです。

活字を目で追っていたら、次読む文字が見えなくなるとか、
頭がぼうっとして、自分が今何を喋っているのか分からなくなるとか。

(まあそれも改めて考えると怖いですが。)

それが今回何もなく、急に不調に見舞われたので、
なんかいつもと違うのかもなぁと思ってはいました。

病院ハシゴ

公園での出来事から、1週間、一ヶ月……

プールの授業が始まる頃になっても
全く症状が改善せず、学校を休み続ける日々が続きました。

流石に家族にも心配され、
どうすれば治るのかとあらゆる病院を受診し、
検査をし、薬の処方を見直してもらったりしました。

頭痛専門のクリニック、内科、循環器科、精神科…

血液検査や尿検査、MRI、まさかのIQの検査までもう色々と。

結局、いつも偏頭痛の時に点滴を打ってもらってきた小児科で、
「起立性低血圧」と診断されました。

忌まわしい症状

起立性低血圧は、寝た状態から起き上がった時に、
調整がうまくできずに血圧が一気に下がってしまい
立ちくらみなどの症状が出る、というものでした。

自律神経失調症の一種で、私は立ちくらみの他、
頭痛、気分不良、食欲不振、睡眠障害、体の重だるさ…
なんかも付随してきました。

ずーっと頭がぼうっとしていて記憶力が乏しく、
そこにいるようでいないような感覚。

酷い時は会話の最中に、今相手が言ったこと、
自分が今言おうとしたことが一瞬で頭から飛び、
まともに言葉のやり取りができない程でした。

そして日常生活に最も支障をきたしたのが、
睡眠障害。

夜何時間も眠れないし、翌朝どう頑張っても起きれない。

季節の変わり目なんかは、
翌朝5時まで寝付けないのもザラ。

一日体を動かして疲れて帰ったとしても寝れない。

朝はとにかく頭も痛いし体も動かない。
目覚ましなんて聞こえない。

気づけば冬の気配が近づく肌寒い季節に。

学校に行けなくなって
半年近く経とうとしていました。

お先真っ暗

夜寝れないし朝は起きれないしで、
まともな日常生活が送れない。

さらにずっときついせいで起き上がれず、
何をしていても頭はぼうっとするので、
自主学習もまともにできない。

学校の勉強についていくなんてもう無理。

あらゆる薬を試すも効果がなく、
サプリでの治療法やプラセンタ注射、
血液にオゾンを混ぜるというオゾン療法など、
できる限りの対症療法は色々試みましたが、
いずれも改善はみられず。

せっかく、人からは羨ましがられる学校で、
華の青春と言われる高校生活を送れるはずだった。

明確な目標はなかったけれど勉強は嫌いじゃないし、
進学校だし、勉強して大学に行って、
どこかに就職するものだと思っていた。

これまでは、勉強しても習い事に通っても、
頑張ればある程度なんとかなった。

そんな自分が、なんにもできなくなるなんて、
思ってもみなかった。

自分はなんて無力で無価値なんだろうと、
惨めでたまりませんでした。

ここから、どうやって生きていけばいいんだろう。
そもそも、私なんかが生きている意味があるのだろうか。
どうしてこんな状態になってまで、生きなければならないのだろうか。

そんな風に考えるようになりました。

ここからが青春

体を壊したことは、私にとって大きく人生を揺るがす出来事でした。

渦中にいる時は、とんでもなく苦しみました。

けれどこの状態を克服した今、私は
“この8年の経験をしてよかった”
と心の底から思えています。

嘘だそんな不幸ない方がいいと、
思われるかもしれません。

けれど、この時体を壊していたからこそ、
出会えたもの、知れたこと、考えたこと、
良い方に変われたことがたくさんあります。

コンプレックスとして超えるのではなく、
全てかけがえのないものとして許し、
受け入れることができる。

生まれ変わったように晴れやかな心地でいられるので、
感覚や思考を変えるきっかけを作ってくれたと考えると、
感謝でいっぱいになります。

ここでようやく、人生がはじまったとも言えます。

体を壊さないまま生きていたら
得られなかったもの、気づけなかったこと、
変わらないままでいたであろうこと。

こんなもので何ができるかはわかりませんが、
記録として残しておき、いつか何かの役に立てればいいなと思います。

日常
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碧い もみじ

平成9年生まれ熊本出身、埼玉在住。
高校入学直後「起立性低血圧(自律神経失調症)」と診断され、その後約8年を棒に振ったものの自力で治し、現在はフルタイムで都内まで通勤している。
絵や歌、アクセサリー作り、古典的な自転車など、興味を持ったことにはとことんハマってきたタイプ。
情報発信についても数年かけて学んだため、自分も何かできることを発信しようとサイトを立ち上げた。

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