アートが教えてくれる”世界の見方”

自分が思っていること、考えていること、
当たり前だと思っていることって、
自分の視点からだと空気のようで
はっきり自覚できません。

別の見方がある、ということを
一回体験するだけで、
今の視点が全てじゃないんだと
世界が広がった心地になります。

・・・

アートな思考が人生を変える?

先日全く別の目的でふらっと本屋さんに寄りました。

ずらっと置かれた本を
見るともなく眺めている時に
ふと目に留まったのが、

「13歳からのアート思考」。

アート思考…?

絵を描くのは好きだし、
動画撮って発信もしてたし…
でも納得いかなくてアカウントごと
全消しした過去歴のある私。

なんか絵を描く上で
ヒントになりそうなことでも
書かれてるんだろうか。

帯には、ビジネスでも学問でも
人生でも応用できるのだ…
というような文言。

ますます分からない。

気になったので、予定外だったものの
一緒にお買い上げ。

さてさてページをめくってみると…

この本、種類としては新書なのですが、
内容は体験ツアーのよう。

作者は美術の先生。

歴史に名を残した
アーティストの作品を題材に、
思考のおりのぶっ壊し授業が始まります。

疑う余地のなかった”リアル”の崩壊

特に私にぐっさり刺さったのが…

「リアルさ」ってなんだ?
の章。

私は高校生の時に、
色鉛筆で写真のごとくリアルに描かれた
人物画とそのメイキング動画に出会い
当時とんでもなく衝撃を受け、
自分も描いてみたいと躍起になっていました。

「どうすればリアルに描けるか」
「どう描けばリアルに見えるのか」
「写真で撮ったように再現できるか」に
とんでもなく執心していたんですね。

穴が空きそうなほど写真を見て、
元の物体はこんな感じの立体だから…
それがこの角度で見えてるから…
多分こっちからメインの光が来てて…
だからここが明るくてここが暗くて…
っていうのを必死で理解しようとしていました。

私にとっての「リアルさ」は
写真だったんですね。

でもこれは、皆さんも別に
そんなに違和感なくないですか?

人間が見ている景色がそのまま
紙とか画面に映し取られているもの。

その写真を再現するように描けたら、
それは一般的にリアルな絵、っていう
認識になるのではと思います。

けれど、「アート思考」では
そこに鋭くツッコミが入ります。

そもそも”人間が見たまま”とは?

>  私たちの考えるリアルな絵って、あくまで「遠近法」にすぎないですよね。

>  その遠近法は、たった一方向から見た景色にすぎないですよね。

>  人間、視界の全てにピント合ってませんよね。

…って。

脳みそが騙される遠近法

遠近法は、特に説明の必要ないかもですが、
近くにあるものは大きく、
遠くにあるものは小さく描くことで
奥行きを出して人間の見た景色を
再現するように描く方法ですね。

大きく鮮明なものは手前、
小さくぼんやりするものは奥だと
脳が認識します。

これにより、同じ紙(画面)内に
同じ大きさのものが描かれていても
脳が錯覚を起こして
違う大きさに見えたりします。

人間の脳みそなんて、
「遠近法」という技術だけで
簡単に騙されてしまうんですね。

“人間が見たまま”というものが
そもそも正確性に欠けるのでは、
と痛いところを突かれます。

一面はあくまで一面

そして私はさっき、
“私にとっての「リアルさ」は写真でした”
って言いました。

これはまさに、
“たった一方向から見た景色”
です。

写真を撮ったその一点から見えている、
いち角度にすぎません。

その裏側はどうなっているのか?
側面は?
真上とか真下は?

そんなことは、一枚の写真からは
分かるはずもありません。

確かにその一方向から見た景色も
一つの側面としてのリアルです。

けれど私の中の感覚では、
その一方向から見て切り取られた
その一面だけがリアルかのように
思い込んでいた…
ということに気づかされました。

脳内合成シアター

さらにさらに。

人間ものを見ているときは、
その見ている一点にしか
ピントは合っていません。

視界のほとんどは、
案外ぼんやりとしか
認識できていないんですね。

だから、たった一点の角度から
撮られた写真の風景ですら、
私たち人の視界には全てを
鮮明に捉える力はないのです。

でも、脳内には「一点」で見た景色ではなく
ちゃんと視界に映る風景全体が認識されていますよね。

本の中では、これを
「多視点」から捉えたものを「再構成」
しているというふうに説明してあります。

視点を移して目の前のものをたくさん見て、
それらを組み合わせた上で、
脳みその中で一つの画として認識している。

私が人物の絵を描くときは、
目をじっくり見て真似して描いて…
次は鼻をじっくり見て描いて…
みたいな感じで、ちょっとずつに分けて
どうなってるのか観察して描いていました。

目や鼻は、どんな立体の一部が見えているのか、
光の加減は、色はどうなっているのか。
質感はどうなってるのか。

顔のパーツがそれぞれどうなってるのか
自分なりに理解した上で、
順番に紙に描いていってました。

分けて観察したものを、
紙の上で組み上げていたんですね。

「見る」というより認識と理解

そしてもう一つ。

私は、写真の中の模写対象の
立体がどうなっているのか、
光がどうなっているのか、
質感がどうなっているのか、
“理解”してからでないと描けませんでした。

元々どういう形のものが、
どう切り取られて今こう見えているのか。
ここが明るいのはor暗いのは、
こっちから光が差しているからか、
みたいな。

目に映るままの本物を、
いったん面とか線にバラして
簡単に考えるとどうなってるのか
頭で理解してその上で、
写真を見ないとどうなってるのかわからない。

分からなければ、点とか線とか、
色をつける面とかを、
紙面上=二次元に
落とし込むことができない。

鯨を初めて見た画家が、
前ヒレを耳だと思って描いた絵が
例に挙げられていたのですが、
やっぱり人間、知識と理解なしには
描けないものです。

つまり、知らないものや分からないものを
ちゃんと間違いなくそのまま
視認することはできないということ。

私たちが「見ている」と
思っているもののほとんどは、
目に映るものをそのまま捉えているのではなく、
脳内で知っているものと照らし合わせて
認識しているんですね。

思考のスノードームに気づいていく

これまで”人間が見たまま”を描く
「リアルな人の顔」を描きたくて、
上手に描いている人の動画を
食い入るように見て、
自分が描きたい絵の参考にする
写真も穴が空くほど見て、
上達しようと練習しました。

でも、私の思っていた「リアル」とは
見た景色から脳みそが作り出した
ワンシーンに過ぎなかったのです。

・写真で撮ったような一視点が
 リアルさの全てだと思い込み、
 写真の再現度こそが評価軸だった。

・視界に映るもの全てを鮮明に
 捉えられていると思い込み、
 紙面(画面)内に描くものには
 全てピントが合っているのが
 リアルだと思っていた。

・そしてそもそも、
 「見る」という行為自体に
 「脳みそで理解して認識」という
 フェーズが挟まっていることに
 気づいていなかった。

章の最後は、
「あなたなりのリアルを見つけてみましょう」
というようなくくり方をしてありますが、
私はまだ自分なりのリアルに
辿り着けていません。

けれどここでの一番の財産は、
自分がどういう見方をしているのかを
別の視点から知れたこと。

そして、当たり前だと思っていた
その見方=フィルターを
疑う視点を手に入れたことです。

自分の見ていた世界は
あくまで一視点の
小さな世界に過ぎなかったということ。

一回この体験ができると、
日常に転がっているいろんなことに対して、
一歩立ち止まって疑いの視点を持ってみたり
自分の考えを自覚したりすることが
できやすくなります。

そうすれば、自分以外の人の
考えや感覚の理解にも近づくし
ものを多角的に見れることで
より本質にも近づきやすくなるのではと
思います。

言うなれば、今まで自分が見ていた景色が
小さなスノードームの中の世界に過ぎなかった
ということに、スノードームの
一個上から見てその事実に気づくことが
できるようになった。

きっとまだまだ、私は
あらゆる面でスノードームの中で
生きているんだと思います。

こうやって色々気づかせてくれる
機会を逃さぬよう、
敏感にキャッチできるアンテナを
持っておきたいですね。

この本、リアルさってなんだ?の
一章だけでもだいぶ個人的に学びになりましたが、
こんなもんじゃないですからね( ̄▽ ̄)

全部で9章くらいありますので、
ここに書いたこと以外でも、
まだまだ余裕でたくさん楽しめます。

是非皆さんも、
思考の檻ぶっ壊し授業、
体感してみてください。

で、何か刺さったら教えてください^^

ということで、ちょっと長くなった気がしますが今回はこの辺で…

では!^^

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碧い もみじ

平成9年生まれ熊本出身、埼玉在住。
高校入学直後「起立性低血圧(自律神経失調症)」と診断され、その後約8年を棒に振ったものの自力で治し、現在はフルタイムで都内まで通勤している。
絵や歌、アクセサリー作り、古典的な自転車など、興味を持ったことにはとことんハマってきたタイプ。
情報発信についても数年かけて学んだため、自分も何かできることを発信しようとサイトを立ち上げた。

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